東京新聞 「ホタル館の灯消える? 板橋区廃止へ動く」

板橋区ホタル生態環境館の問題に関し、東京新聞に2度にわたり記事が掲載された。

表題記事は2014年2月17日(月)朝刊一面掲載

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014021702000209.html

 「板橋・ホタル館問題 「成虫持ち込み証言も」 飼育担当は「あり得ぬ」 2月20日(木)山手【地域の情報】掲載

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20140220/CK2014022002000119.html 

 

この調査に関する報告書は板橋区役所サイト「板橋区ホタル生態環境館におけるホタル等生息

調査の結果について」に掲載されている。 

http://www.city.itabashi.tokyo.jp/c_oshirase/059/059497.html

ホタルの飼育に携わる方には是非、ご確認いただきたい。

 

この調査が現実にどの様な状況で行われたかの事実関係については、現在、ホタル救出と存続の為の署名活動に配られているビラに、よりリアルに記載されている。

※ PDFファイルはこちらで… http://luciola.co.jp/images/pdf/140215luciola.pdf 

 

 

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記事内幼虫数についての見解の相違

    ―「幼虫は数万匹いる」とするホタル側の見解―2月17日記事

    ―ゲンジボタルの幼虫2匹を捕獲し、全体では23匹と推測した。―2月20日記事

成虫持ち込み疑惑

    ―過去に成虫を持ち込まれていたという関係者の証言を明らかにしたが、「事実確認は

   していない」とした。 20日の記事

 

記事からは板橋区側の意向が廃館ありきという前提に基づいて行われた調査であることが、明らかに読み取れる。ここで、疑問点について検証してみたい。

 

1.この調査自体をホタルの飼育に実績のある専門家に依頼しなかったこと。

  調査方法や小さな幼虫や稚貝の見分けがつかなかった可能性が高く、上陸地に踏み入ったこ

  とから見て、ホタルの生態調査に関し、ほとんど経験の無い業者を意図的に指定した可能性

  が高い。

  ホタルの上陸・羽化はすべて同時期では無く、ある期間に渡ってランダムに行われ、1年で上陸

  せずに、幼虫のまま年を越すものもいる。遡って考えれば、この時期は、様々な大きさの幼虫や

  カワニナが存在するのが普通であり、種の保存の法則でもある。

 

2. 報告書に、―調査方法は国土交通省の「河川水辺の国勢調査 基本調査マニュアル

  【河川版】(底生動物調査編)」に基づいて、マクロベントス法を用いている。―

  とあるが、この調査にマクロベントス法という記載はみられず、そもそもマクロベントスは海洋生物

  のことで、使われる場合は、主に深海、大型河川(一級河川)が対象になると思われる。

  当館のせせらぎはこの調査対象になっている河川には該当しない上、実際の調査はこの

      マニュアルよりさらに粗雑な方法で行われたことが、目撃者したスタッフの証言からも明らか。

 

3.通常、ホタルの生態数調査の多くは幼虫期の無理な調査を避け、成虫期に行われる。

  あえて、越冬中で、生態に最も悪影響を与え、見つけづらい時期を選択しているのは、

      幼虫の数が少なく無ければならない、という前提ありきで故意に行われた可能性があり、

      せせらぎ内に踏み入った点から見て、ホタルの生態数自体を少なくする目的があった

      可能性も高い。

 

4.区側はこの調査を客観的に、正しく判断出来る学識経験者やホタル専門家に一切確認を取らず、

  阿部氏の見解も公表していない。

  この調査自体が本来のホタル生態数調査として、適切で無いことが明らかになること自体を

    避けていると考えられる。

 

5. 公的機関は通常、このような未確認情報を公にすることはほとんど無いのではないだろうか。

  もし、持ち込まれたと主張するのであれば、それは何匹で、どこからどう持ち込まれたかの

  証拠を明らかにするべきである。

  

阿部氏の実績を貶め、25年間継続された累代飼育を途絶えさせ、せせらぎにダメージを与え、且つ、多くの生態の命を奪ったことは、犯罪行為に当たるのではないのだろうか。

阿部氏はこのせせらぎを一から作り上げ、ホタルの世代交代に成功し、日本屈指のせせらぎまで育て上げてきた。

このような稚拙な調査結果を盾に取り、管轄部長が、突然、阿部氏の排除を決定し、発令するという権限はいったい誰が認めたのだろうか。

板橋区長自らこの調査方法を正すこと無く、2月19日板橋区議会定例会に於いて、「23匹という報告を受けて、少ないのに驚いている」といった答弁をされている。区長を筆頭に、区が今まで財産であり、誇りとし、推奨してきた発言は数多くあったのではないだろうか。

 

この問題の決着が着くまで、せせらぎを放置し続けるということは、多くの残された尊いホタルやほかの多くの生態の命が日々失われてゆく。

これだけのせせらぎである。十分に論議を尽くし、たとえ、廃止が決まるとしても、その日までは大切に命を育み、また、その後の生態の行く末までをも決めることが、ここまで大きく育てて来た区自らに課せられた責任と義務では無いだろうか。

万が一、板橋区での存続が難しいという結論に達した場合、故郷の大熊町に戻すという選択肢もあるかもしれない。しかし、それが出来るのは唯ひとり、阿部氏しかいないことは誰の目にも明白だ。

 

板橋区は存続、廃止以前に、まずこのせせらぎへの暴挙を正す、自浄努力をするべきではないのではないだろうか。

   

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―ホタル館では、卵から成虫への世代交代が続き、みんなの見える場所で、産卵とふ化があった」―

ここから、2月20日の記事内で語られている、当館でのホタルの営みを、目撃して来たままに追ってみたいと思う。   

  

板橋区ホタル生態環境館のゲンジボタルは1989年(平成元年)、福島県双葉郡大熊町熊川より卵を採取し、ヘイケボタルは同年、現日光市(当時栗山村)から卵を採集したのが始まり。今年度で累代飼育25世代目になる。

 

毎年夜間特別公開が終了する頃、ハイゴケに産卵された沢山の卵から孵化幼虫が生まれるところが公開されている。ゴミのように小さい孵化幼虫が顕微鏡で見られ、夏休みには、多くの人々、子供たちが訪れ、驚きと喜びの声を上げている。

区の公開施設ということで、匹数の報告が義務化されていると聞いている。その孵化幼虫をスポイトでカウントする際、毎年、インターシップの学生たちも手伝っていた。カウント終了後は、せせらぎに戻す。その後の成長は植物が鬱蒼と繁るせせらぎ内ではほとんど確認が出来ないため、訪れた見学者には飼育室の水槽の中で確認出来るよう工夫されていた。

せせらぎに戻した後の調査方法も確立されている。成虫のカウントの仕方、幼虫の数え方など、独自の研究に加え、他大学などとの共同研究も加わり、すべて明らかになっていると聞いている。幼虫数、成虫数共にすべて区へ報告が上げられ、このカウントは年末まで続けられていたそうだが、区はこれを公表していない。

卵から孵化幼虫へ、終令幼虫から蛹へ、そして羽化。生き残るより、落ちてゆく数の方が多い。ホタル孵化幼虫から成虫への羽化率については自然界では0.05%といわれているが、このホタル生態環境館の羽化率は好環境により、それより高い。

そして、4月、ホタルが上陸するところは、非常に神秘的で美しい。この初めての体験はとても感動的だった。

上陸を待ちながらの打ち合わせの折り。ホタル生態環境館のスタッフから「上陸した!」という一報が入り、みんなで確認に行くと、真っ暗な中、お尻の光だけがキラキラと光り、上陸地を上っていた。その様はまさに動く宝石のようで、成虫の光の舞いとはまた違った美しさだった。今でもハッキリ覚えている。

土に潜り、蛹になると外からは全く確認出来ない。1ヶ月前後の後、徐々にせせらぎで羽化が始まってゆく。毎年、羽化を待つ阿部氏がこの時期、神経を張り詰めているのは、何年行われていても、その姿を見るまでは、安心出来ないからとおっしゃっていた。祈るような思いで待たれていると……。

 

こんな公開を続けられて25年、多くの人々が目にし、癒され、感動を与えて来たホタルの光は、紛れもなく当館での累代飼育の成果であると言えるのではないだろうか。そして、これこそが、裏付け以外の何ものでもないと確信している。

 

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ホタルは人間の魂につながる存在ともいわれ、優れた感性を持つ、神秘的な生命体でもある。

そんなホタルの神秘にまつわる、いくつかのエピソードを紹介してみたい。

 

それは2000年6月伊豆大島南三宅島噴火の前日、当館せせらぎ内で起こった。

通常、昼間は葉の影に隠れたてほとんど寝ているホタルたち。その日に限り、監視カメラに映し出されたのは、せせらぎ全体が黒く覆われるほどに、沢山のホタルがいっせいに飛び上がり、ブンブンと飛び交っている姿だったという。

 

また、海外でも起こっている。2001年同時多発テロ事件9.11の後に、不思議な光の映像が阿部氏の元へ持ち込まれた。場所はセントラルパーク、季節外れの9月にホタルが大量発生し、そして、一斉に舞い上がり、ある高さに達すると消えていった映像だ。人の魂を体現する存在でもある彼ら。しかし、この映像はその当時の判断で封印されたそうだ。

 

東京都内水道橋にある「東京のお伊勢さま」と称され親しまれる東京大神宮様のホタル水路は2004年に、板橋区ホタル飼育施設当時、 阿部施設長の指導の元に制作設置された。

2005年11月15日、それは紀宮様ご成婚の日の夜に起こったという。挙式にも関わられた松山宮司様が帰られたその夜、季節外れのせせらぎでホタルの羽化を目撃された。2匹のホタルがご成婚を祝うように、ひっそりと光を放っていたという。これは、宮司様より阿部氏へ確認の連絡が入り、分かったことだ。

 

2007年5月には、実話に基づく映画『俺は、君のためにこそ死にに行く』が放映された。この中で、「俺、ホタルになって、また、ここへ戻って来るよ」と言った特攻隊員が戦死し、1匹のホタルとなって戻って来る感動的なシーンがあった。そして再び最後、多くの特攻隊員の魂となって、沢山のホタルが光の舞いを見せる。

この映像も当館、当時は板橋区ホタル飼育施設の協力で実現している。その安定してゆらぐ優雅な光は、肉眼だけではなく、数々の映画、TVの映像作品にも使われ、残され、なお美しく光を放っている。見るものを魅了し続けてきた。

 

 

そして、2011年3月11日(金)、東日本大震災が起こり、ここのホタルたちの遠い祖先、生まれ故郷の福島県大熊町でホタルが絶滅してしまった。

それ以降、この当館のホタルたちが幾度と無く、不思議な行動を取るのを目撃した。確か6月のある日、初羽化からしばらく経った頃だった。一定量に達したホタル達が、せせらぎを歩く阿部氏のまわりにまとわりついて離れなかったことがある。いったい彼らは何を訴えていたのだろうか。

初めて見る光景に、そう思わずにはいられなかった。

 

6月14日には、ホタル夜間事前特別公開が行われた。区が福島県大熊町の被災された方々も招待されて行われた。その時起こったこと……。

通常オープンの7時半過ぎはまだアイドリング中のホタルが多く、飛び上がる数はそんなに多くない。ところがその年に限り、オープンと同時に多くのホタルが、かつて無いほどに舞い上がり、素晴しい光を放ったのだ。それは、まるで失われた仲間たち、そして、人々を弔うかのような感動的な光だった。

板橋生まれのホタルたちに、連綿と受け継がれた大熊町のホタルたちの命の輝きだったのだろうか。その年はずっとそんな輝きを披露し続けた。

今回の新聞掲載記事に目を通しながら、まず、私の脳裏を過ぎったのはこうした彼らの姿だった。

 

天変地異や魂に呼応するかのような行動をとるホタルたち、今回の調査という名目で行われた暴挙と多くの失われた命をどう思い、今生き残った彼らは何を思っているのだろうか。

彼らを愛し、慈しんで来た阿部氏が彼らの元へ戻られることを1日千秋の思いで待っているのではないだろうか。

こうしている間にも、生き残った貴重な命が……、その灯を消しつつあることが非常に心配される。私たち人間は、この声なき声を受け取る心を、失ってはいけないと思わずにはいられない。

 

現在、専門家に調査についての検証・見解をお願いしている。これにより、一日も早く、真実が公表され、本来のあるべき姿を取り戻すことが急務ではないかと強く思う。

 写真 阿部宣男氏撮影

都政新報 「板橋区ホタル館、委託業者を変更」年度半ば館長には移動命令

先週2月7日、都政新報に掲載された記事について考察したいと思う。
 https://www.toseishimpo.co.jp/modules/news_detail/index.php?id=2587

— 記事要約 —                                                                                                                                                        

板橋区が廃止する方針の「ホタル生態環境館」の委託事業者を従来の「むし企画」を受託業務を履行出来ないとして、自然・環境教育で実績を持つ民間会社に変更していた。区担当者(館長)に所属環境課内での移動を発令。同館内で業務サポートをしていたボランティアも排除。区は1月27日ホタルの生態数を調べるため、ホタルを飼育している「せせらぎ」で成虫やカワニナの数を調べた。区の保持する特許技術の提供件数、土の抗菌を目的に飼育しているクロマルハナバチについても調べている、という。これに対し、同館関係者は業務を適正に行っている中で、契約不履行とこの調査に批判。区は15年度までに廃止する方針を固めているが、区議会から技術の継承を促す声が出ている。

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 この板橋区ホタル生態環境館は、都内、いや、国内有数のホタルが生息するせせらぎ。同区議員の発案により、板橋区職員  阿部宣男氏によって研究開発され、同区は平成19年1月12日に『ホタル累代飼育システム及び方法』の特許第3902476号を取得している。

 

 同館には、全国から教えを請う人々が数多く訪れ、後を立たない。後に学位を取得されて、名実共にホタル博士と称される阿部氏はホタルを愛する人々にとって最後の砦のような存在だ。
 私自身も全国各地へ赴き、地元造園業者や大手建設会社が設置したホタル水路、中には億という予算を使った水路、某ホタルで有名地域の先生と称される方の教えに従い作り上げられ、全くホタルが生息出来ない水路も目にしてきた。そういうどんな水路をもホタルの生息地に変えられる。それが阿部氏の高い見識と経験に基づく技術である。

 

 今は足を煩われ、しばらく同館から離れられている元顧問の農学博士 山岡誠氏(前区長が承認)はよくおっしゃっていた。「全国でホタルの飼育や研究をされている方は多いが、ここまで、水質や土壌まで開発し、作り上げている例はほとんど無い。素晴らしい技術だ」と手放しで賞賛されている。山岡氏は西日本ではホタルで有名な方。元九州女子大学教授、全国ホタル研究会の元理事、北九州ホタルの会名誉会長歴任。北九州市にホタル水路をいくつも作られ、ホタル係という部署までつくられた方だ。山岡氏も当時、同館でボランティアとして訪れた人々にホタルについてご説明されていた。

 

 その初期の研究の足跡は論文「水圏環境の自然回帰へ向けたホタル生態系の設計と構築」で発表された。 http://ci.nii.ac.jp/naid/10018719524 日本生物地理学会会報第61巻2006年12月20日 P91-P98

 

  特許に関わるホタル水路の用土を開発された会社社長にお会いした際もこんな話を伺った「阿部先生に土をお持ちした際、一目で良い土だと見分けられ、驚いた。そんな人はほとんど居ない」とおっしゃって、信頼され、さらに研究を重ねて、ホタル生息に不可欠な用土を開発された。

 

 用土に関する論文「多機能バイオ用土を用いたホタル飼育と環境の改善」は2003年11月にテクノロジーに関するアジア国際シンポジウムほかで発表されている。

 

 また、阿部氏は受粉昆虫在来種マルハナバチ類の繁殖飼育にも国内で唯一成功している。同館ボランティアとして、共同研究をしていたスタッフ、発明者でもある学術博士 綾部斗清氏と共に築き上げて来た。さらに、ホタルの生息地との関係にも気付かれ、ホタル水路と在来種マルハナバチ類の相互作用も研究されている。 

 

 さて、ここからこの記事の内容を検証してゆく。

—「区資源環境部の井上正三環境課長は『現在の受託者が受託業務を履行できないことが明らかであるため。詳細は明らかに出来ない』としている。年度内に事業者を途中交代させるのは異例。—
—これまでホタル生態環境館の業務は、個人が運営するグループの「むし企画」が受託していた。—

 

 しかし、この「むし企画」はホタル飼育に不可欠なカワニナやホタルのせせらぎに共生する魚やエビ類を専門に扱い、また、阿部氏の右腕として、長年、全国のホタル再生を実際に行って来た優秀なスタッフも抱えている。

 

—同課は『ボランティアについても、お引き取りをお願いしていた』としている。—

 

 記事にはこうあるが、ボランティアには、かつては山岡氏、現在はホタルにも長く携わり、熟知している綾部氏のような非常に優秀なスタッフなどが含まれていたことは確かである。あまりに来館者が多く、職員だけでは手が足りないところをサポートされていた。

 

 さらに以下のような調査を行った。
—区は1月27日、ホタルの生息数などを調べるため、国土交通省のマニュアルに基づき、同館の調査を実施。ホタルを飼育している『せせらぎ』で泥•石などを採取し、成虫(幼虫の間違い)やカワニナの数を調べたという。—
—これに対し、同館の関係者は「せせらぎ内の動物などは越冬中のものがほとんど。今は静かに過ごす時期で、生態に大きく影響する」と批判。—
—区などによると、新たに業務委託を受けるのは「自然・環境教育で実績を持つ民間企業。—

 

 区が行ったとあるが、実際には民間企業が行った。ホタルにとっては、静かに見守らなければならないこの時期に行ったということは、この業者自体がホタルの生態に不案内であり、また、国土交通省にホタルの生態数に適用出来るようなマニュアルは存在しない。
 この業者は昨年、同館阿部氏の元へ「ホタルのことを知らないので教えて欲しい」と教えを請いに行ったという話はもれ伝わっている。100歩譲って、その後、学び 始めたとしても、阿部氏のレベルには到底及ばない。ホタルの飼育に携わる当社のスタッフもまた、「ホタルについて阿部先生より詳しい人などどこにもいない」と全幅の信頼を寄せている。

 

 ホタル夜間特別公開時、何千匹も光るこの同館のせせらぎには何万匹もの幼虫が生息する。これは、ホタル産卵後の孵化幼虫で毎年数を確認されている。
 これを持ってしても、何の為の調査なのか、自ら区の財産を否定し、せせらぎを荒らす行為は全く理解出来ないと思うのが、ホタルを知る人のほとんどでは無いだろうか。

 

 通常、どの業界であっても専門分野について、どの委託業者が相応しいかという判断は、管轄部署の専門知識の無い契約担当者には難しい。まず専門家、この場合は阿部氏に指示を仰ぎ、判断を委ねるのが常である。政府であれば、有識者会議というのが、これに当たる。企業であっても、通常トップの人間が専門家に意見を求め、指示を仰ぐことになる。しかし、この記事を見る限り、全く逆になっている。全くの素人がどこを見て、いったい何をどう判断出来るのだろうか。

 

 当社も他県行政のホタル水路について、年間委託を受けているが、現在の行政側の担当者はホタルの生態についてはあまり分らないため、年間委託契約をした後は全面的に任される。契約スタート時は、この行政の責任者が自らホタルの幼虫を飼育されている方でした。しかし、「5世代ぐらいまでは何とか継続出来てもその後は不可能ということで、全面的な信頼を寄せる阿部氏の門を叩いたのが始まりになる。 

 

 同館のホタルが現在、25世代目の幼虫期であるというのは、驚異的な実績である。ここのホタルの夜間特別公開をご覧になると、ここのホタルの光はゆったりと舞い、光自体も強いと、訪れた方の多くが口にする。
 

 板橋区はホタルに関するもう一つの特許を平成20年7月4日に取得している「ホタルの発光パターン再現システム及びその再現方法」特許第4150207号

 

 これは茨城大学と板橋区の共同研究による特許。当社の元代表 茨城大学 教授 稲垣照美(当時助教授)及び元取締役 故安久正紘(茨城大学及び福島工業高等専門学校名誉教授)と阿部氏の共同研究による。これは同せせらぎのホタルの映像を解析して、再現をする光の開発になるが、その過程で、同せせらぎのホタルの光に1/fゆらぎがあることは実証されている。それこそが、ホタルが自生している証である。

 

 この論文「ホタルの光と人の感性について−感性情報計測と福祉応用−」によって、阿部氏は2004年日本感性工学会論文賞を受賞されている。論文が掲載、発表出来るということは、すなわち内容が正しく認められたということにほかならない。

 

 この1/f ゆらぎについて、2007年8月、TV朝日の「宇宙船地球号」という番組で興味深い実験が為されている。ナレーションを故緒形拳さんが担当された、関連部分を抜粋紹介する。

 

ホタルの光に異変!?知られざる“威嚇の光”

 

ナレーション……

「阿部さんは『生まれた場所でしかホタルはうまく生きられない』と言う」

阿部(敬称略)……

「ルールを守らないと定着をしない、ということですよ。いくら成虫を放しても無理です」

ナレーション……

「ほんとうのホタルの光は自生する場所でしか、見ることが出来ないのだと言う。山里    (能 登)の人知れぬ闇の中に、その本物があった」

阿部……   

「落ち着いて光っていますよね。ゆったりと同じリズムでゆっくり明滅を繰り返す。飛んでるホタルはほとんどがオスで、メスに求愛行動を取っているのですが、メスは気に入った雄が出るまで下で待つわけですよ」

 

—優雅に舞うホタルの光が映し出される—

 

ナレーション……

「ホタルの光はメスへの求愛のしるしなのだ。まるで、呼吸を重ねるように、シンクロしながら、明滅している。その光はつがいになり、子孫を残す重要な役目を果たしている」

ナレーション……

「阿部さんが妙な光を見せてくれた」

 

—ホタルを手のひらに乗せ—

 

阿部……   

「消えないですよね。ずっと点きっぱなしか、さもなければ、強弱の明滅をただただ繰り返す。これを威嚇光という」

ナレーション……

「激しく点滅したり、消えない光、こんなホタルが全国で見られる、というのだ。
阿部さんはある実験を見せてくれた。あの板橋の施設(せせらぎ)から1km程離れた公園に茅を張り、18年間世代交代をくり返して来たホタルを移動させて見る。これまで調べたところでは、生まれた場所からわずか400m移動しただけでも、放たれたホタルは異変を来すというのだ。ホタルはまるで、のみのように飛び始めた」

阿部……   

「普通の求愛光では無いですよね。威嚇光だと思います。明らかにここは自分の住んでいるところでは無いと判断していると思うのです。放たれたホタルを見て、決して癒されるとは思わない。ホタルがなんらかの警告を発している。自分たちはここには住めないんだ。住んでいけないのだ、と仲間に伝えている。俺たちは終わりだから、早く命を絶とうという警告の灯りだと思うのです」

ナレーション……

秘密が隠されていた。光の信号解析を専門にする(准教授 土井慈貴さん)に何ヶ所かで撮影したホタルの光を解析してもらった」

 

 結果は能登の光は比較的きれいな“1/f ゆらぎ”になっていることがわかった。“1/f ゆらぎ”とはたとえば、ろうそくの炎に見られる規則性の中に不規則性を含んだゆらぎ、これを見ると人は心地よさややすらぎ、懐かしさなどの感覚を覚えることで知られている。
 一方、“威嚇の光”の分析では、いわゆる“f2乗分の1ゆらぎに近く、電飾などの光に見られ、人は退屈、単調、眠気などを覚えることが分っている。つまり、捕まえられ、威嚇の光を放つホタルを見ても、人はほんとうのやすらぎを得られない、という映像が放送された。買ってきたホタルの寿命が短いということも、然も有りなんと思われる。

 

 この情報から見ても、“1/f ゆらぎ”があると証明されている同館のせせらぎで育ったホタルはここに自生しているということになる。これは板橋区自ら取得した特許 「ホタルの発光パターン再現システム及びその再現方法」によっても証明されているといえるのではないだろうか。区の財産でもあり、保有する特許の技術自体を否定する行為をすれば、今まで長年に渡り、TV・ラジオ・新聞雑誌様々なメディアで紹介されて来たすべてを区自らが欺いていたことにはならないだろうか。

 

 記事はこのように締めくくられている。  

—同館を巡っては、施設の老朽化とホタル飼育の技術の継承の難しさから区は15年度までに事業を廃止する方針を固め、区議会から技術継承を促す声が出ている。—

 

 最後に、昨年発売された本『とにもかくにも板橋区が好きだ!板橋本』 (えい出版社)刊に触れる。今、近隣のほとんどの書店の店頭に並んでいるこの本の 82.83ページに同館及び館長が紹介され、タイトルにはこう書かれている。

 

かつての美しい自然がここにある ホタル博士が愛を込めて育てた板橋のホタルに会いに行こう! 

 

 このタイトルそのものの様に阿部氏が愛し、育んで来た素晴らしいせせらぎは今後も阿部氏の管理下に置かれ、より良い形で存続されることを心より願う。鋭意検討を望む。

写真 阿部宣男氏撮影 

  • ゆらぎによる癒し

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